タイ商標法において、識別性は商標登録および商標の保護における基本的要件である。タイの裁判所では、商標の使用ではなく、商標固有の特性に基づいて識別性を評価するのが一般的である。これは、使用を通じて獲得された識別性を証明するには、使用期間、流通範囲、宣伝広告活動など、実質的な証拠が必要となるためである。
しかしながら、知的財産・国際貿易裁判所(IP & IT裁判所)は最近、図形商標「weplay」が使用を通じて識別性を獲得したとの判決を下した。これはタイ商標法では異例の判決である。その後、特別控訴裁判所(Court of Appeal for Specialised Cases)は、商標の構成要素を総合的に評価した結果、商標の固有の識別性を認めた。
本記事では、固有の識別性と獲得された識別性の両方を証明するための基準について説明し、両方の裁判所の事例を示して、訴訟の準備と裁判所が識別性を評価する方法の理解に役立つ貴重な洞察を提供する。
[1] 背景
2017年、原告は、玩具ブロックを含む第28類の商品について、以下に示す商標について商標出願を行った。
登録官は、商標法第7条に基づき識別力がないという理由で出願を拒絶した。原告は商標委員会に審判請求し、商標委員会は、「 weplay 」という用語が第28類の商品に使用されている場合、「遊具」という出願された商品の性質を記述していると判断した。したがって、「 weplay 」は商標法第7条第2項(2)に基づき識別性がないと判断された。
[2] 知的財産・国際貿易裁判所の判決
2024年、知的財産・国際貿易裁判所は、「weplay 」という用語は造語ではなく、「we」と「play」を組み合わせたもので、「私たちは遊ぶ」という意味を伝えるものであるとの判決を下した。この用語が第28類の商品に使用されている場合、その商品の性質が「遊び道具」であることを説明していることになる。したがって、出願商標を識別力がないと判断した。
しかしながら、裁判所は原告が提出した証拠を検討したところ、原告はタイで10年以上にわたり当該製品を販売していたことが示されていた。請求書、オンラインおよび印刷カタログ広告、その他の文書を含むこれらの証拠は、タイにおいて10年以上にわたる広範な製品流通および広告と並行して、商標が継続的に使用されていたことを裏付けていた。当該証拠により、当該商標が付された商品が広く販売、流通、および広告されていたことが決定的に立証された。したがって、当該商標は、商標法第7条第3項に基づき、継続的な使用を通じて識別性を獲得したと判断された。こうして、第一審裁判所である知的財産・国際貿易裁判所は、当該商標は登録されるべきである旨の判決を下した。
その後、両当事者は控訴した。
[3] 控訴決定
2025年2月26日、特別控訴裁判所は、問題の商標が次の2つの重要な要素から構成されていると認定した。
- 単語「weplay」
- 珍しい色の組合せを有する丸みのある形をした図形
「weplay」という用語は記述的というより暗示的であり、消費者により商品と関連付けるには解釈が必要となると判断された。図形要素と組み合わせることで、商標全体として、消費者が商品を認定し識別することができる識別性を有する。したがって、本商標は、商標法第7条第1項及び第2項(8)に定める識別力の基準を満たしている。
したがって、特別控訴裁判所は、出願商標は本質的に識別力があるという結論を下した。
[4] コメント
この事例は、タイの裁判所が包括的なアプローチを採用し、商標の識別性を評価するためのより動的な枠組みの構築に貢献していることを浮き彫りにしている。また、使用を通じて獲得された識別性を考慮する傾向が高まっていることを示しており、商標訴訟においてより柔軟な要素となっている。
本記事についてのご質問などは、Mr.Nuttaphol Arammuangまでお問合せください。
備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。
Thai Court Finds Acquired Trademark Distinctiveness through Use in Rare Decision