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10月 3, 2022

改正ベトナム知的財産法は商標にどのような影響を与えるか?

最近成立した改正ベトナム知的財産法 (以下、「改正IP法」という)は、2009年を最後に知的財産法が改正されて以来、ベトナムの知的財産制度に対する最も重要な改正であり、222の条項のうち80の条項に影響を与え、12の新しい条項が新設された。

ベトナム国会は2022年6月16日に改正IP法を承認し、一部の条項を除き2023年1月1日に施行される。

商標に関する改正IP法の注目すべき点として、次の点が挙げられる。

 

[1] 音商標(Sound Marks)の保護

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP: Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)の一環としてベトナムが約束を果たすために、改正IP法は保護対象として音商標を追加している。しかしながら、これらの非伝統的な商標をより簡単に審査するために、法律は音商標が写実的表現(Graphical Representation)で表わすことができる必要があると規定している。

第73.7条には、「著作物の全部または一部の複製物。ただし、著作権者の承諾を得た場合は、この限りではない。」旨を構成する音商標の拒絶理由も追加された。この規定は広範囲にわたるものであり、音商標を含むものとは別に多くの場合に使用される可能性があり、広範な著作権の保護の向上が期待される。

 

[2] 周知商標(Well-Known Mark)の定義

第4.20条は、周知商標の定義を、 「ベトナムの領土全域にわたって消費者によって広く知られている」 という古い一般的な定義に代えて、 「ベトナムの領域内の関係分野の公衆に広く知られている」 ものを意味するように修正している。この新しい定義は、国際基準に沿ったものであり、これにより、商標所有者の商標がベトナムでの周知商標として認められる機会が増えると予想される。

また、改正IP法では、後願商標の拒絶理由との関係では、後願商標の出願日より前に周知状態を取得しなければならないことが明確化されている。さらに、改正IP法は、第75条に

示された8項目の基準のいくつかまたはすべてに基づいて、商標の周知性を決定することができることを確認している。

 

[3] 後願商標を拒絶するために使用される存続期間満了後の商標の期限の短縮

今日では製品のライフサイクルが短くなっていることを考慮し、ベトナムの規制を他の法域の法律や運用と適合させることを目的として、後願商標が保護されないようにするために使用される存続期間満了後の商標の期限が3年に短縮された (従前の規定では5年)。

 

[4] 取消または無効手続中の商標出願の停止

過去においては規定がないため、引用商標に対する取消または無効手続と商標出願の手続が相容れない場合、商標出願人はしばしばジレンマに直面した。しかしながら、改正IP法では、出願人はベトナム国家知的財産庁に対し、関連する不使用取消または無効の手続の結果を待つために、商標の審査手続の停止を請求することができる。これは、商標の帰趨に大きな影響を与える可能性がある。

 

[5] 「Bad Faith (悪意) 」 が正式に異議申立理由と無効理由となる

悪意の欠如は、商標所有者、特にベトナムで商標登録を受けていない者にとって、商標の無断使用者と戦う上で長年大きな困難となっていた。改正IP法では、 「悪意」 の行為が商標出願や登録に対して異議申立て・無効にする独立した法的理由として初めて認められた。

 

[6] 出願商標の新しい拒絶理由および登録商標の終了・無効の新たな理由

(1) 拒絶

改正IP法では、係属中の商標出願を拒絶する2つの拒絶理由が追加されている。

(i) ベトナムで保護されていた、または保護されている植物品種の名称の使用(そのような標章が、植物品種から収穫された同種または類似の植物品種あるいは同種の製品である商品に対して登録されている場合)

(ii) 他人の著作権の保護の対象となる著作物のキャラクター又は図形の名称および画像であって、出願日以前に広く知られていたものの使用

 

(2) 終了

また、改正IP法では、登録商標の存続期間の終了理由として、次の2つが追加されている。

(i) 当該登録商標が、当該登録商標を付した商品又はサービスの普通名称(一般名称)となっていること

(ii) 商標所有者又は所有者の許諾を受けた者が保護される商標を使用することにより、商品またはサービスの性質、品質または出所に関して消費者に誤認を生じさせること

この改正は、EUベトナム自由貿易協定(EVFTA: EU-Viet Nam Free Trade Agreement)に基づく。

 

(3) 無効

改正IP法では登録商標を無効にするために新たな法的理由が設けられた。

(i) 登録商標の出願人に悪意があると判断された場合、その登録商標の一部または全部を取り消すことができること

(ii) 商標出願の修正によって、最初に出願された商標の性質が拡大又は変更されたこと

 

[7] 立体商標を拒絶するより詳細な理由

改正IP法では、立体商標の拒絶理由を次のように追加し、明確化している。

(i) 立体商標は商品の一般的な形状である。

(ii) 立体商標は商品に必要な技術的(機能的)特性を表現したものに過ぎない。

(iii) 立体商標は商品の価値を大幅に高める。

最初の2つの理由は一般的で明確であるが、3番目の理由は新規なものであるが非常に曖昧であり、この条項をどのように解釈し適用するかについてのさらなるガイダンスが必要である。

 

[8] 商標異議申立と情報提供の並行手続

改正IP法では、審査手続中に第三者が意見を共有する仕組みが以前からあったことに加え、新たに第三者が商標出願に異議を申立てることができる仕組みが導入された。なお、第三者の意見は商標出願の審査に対する参考資料に過ぎず、対象の商標の公開日から商標保護証の付与の決定の日までいつでも提出できる。一方、異議申立ては、第三者が商標出願の公開日から5月以内に商標出願に対して異議を申し立てる独立したスキームである。

 

[9] コメント

いくつかの不明確な規定が残っているが、改正IP法は、商標の権利化手続を容易にし、より良い方法で権利を確保し、ベトナムを世界の条約および一般的な慣行に近づけている。

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