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8月 17, 2022

タイ、在宅勤務制度に関する労働者保護法改正を検討

新型コロナウイルスの危機の際、タイ政府は企業に対し、職場での感染を防ぐために労働者に在宅勤務を許可するよう求め、その後、在宅勤務が全国の労働者の標準となりました。しかし、現在はパンデミックの異なるフェーズに入り、ほとんどの企業は在宅勤務を廃止しています。在宅勤務は過去のものになりつつあるのでしょうか。

いいえ、そんなことはありません。タイ議会は最近、現状を反映するためにタイの労働者保護法を改正する、いわゆる「在宅勤務法案」を第一読会において可決しました。法案に付随する立法覚書では、労働者保護法の改正案は、使用者と労働者のより柔軟な雇用の取り決めと解決を促進すると述べられています。興味深いことに、さらに覚書には、当該法案がバンコクなどの交通渋滞の解消とエネルギー消費の削減を目指していることも記されています。

現在の法案は、労働者保護法に「雇用者と労働者は雇用契約において、労働者が自宅または居宅で勤務することを合意できる (may agree)」という条項を一つ追加するものとしています。本条項案によれば、この在宅勤務は週8時間以上でなければならないとされており、それは従業員の通常の勤務時間として計算されることになります。

「合意してもよい」という文言は、使用者が合意する必要はないことを示唆しており、したがってこの条項を労働者保護法に追加する意味はないのではないかと考えられます。しかし、この改正の意図は、従業員が在宅勤務を希望する場合、使用者は合意しなければならないという点にあるとのことです。法案に関する公聴会では、複数の当事者が「may agree(合意してもよい)」という用語の曖昧さに対して懸念を表明しました。法案が成立した場合の最終的な文言はまだ明らかになっていません。

労働保護福祉局をはじめとする多くの関係者は、この法案がさらなる労働問題を引き起こす可能性があるとして反対しています。法案は簡潔ですが、使用者にとっては、これをどのように実行に移すかについて多くの疑問点が生じます。例えば:

  • 一定の業務、例えば、建設、工場運営、清掃サービス、レストラン、接待サービス業などは例外となるか。
  • 雇用者はどのようにして労働者の生産性を監督することができるか。
  • 雇用者はどのように残業を監督すべきか。
  • 従業員は「自宅」や「住居」の代わりにカフェから働くことができるか。
  • 雇用主は、従業員が仕事をするために使用したインターネットと電気代を支払う必要があるか。
  • 従業員は事務用品を持ち帰って使用することができるか。
  • 雇用者はどのようにして労働安全管理を行うことができるか

などです。

この法案は、現在、議会の第2読会を通過する前の小委員会によって検討されています。多くの専門家は、同法案が上院に送付される前の第2、第3読会において激しい議論を巻き起こすと予想しています。

 

備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。 Thailand considers New Labor Law on Work-from-Home Arrangements

その他の情報 

2月 24, 2022
過去2年間、COVID-19のパンデミックはタイのほとんどの企業に深刻な影響を与えており、多くの伝統的企業は、賃金や給付金の削減、一時的な事業停止、さらには従業員の解雇など、生き残るために思い切った対策を取らなければなりませんでした。しかし、革新的なスタートアップ企業やオンラインビジネスはこのような問題に打ち勝ち、代わりにこの期間に急速な成長を見せている企業も多くみられます。ただし、これらの企業は別の問題に直面しています。それは、良い人材を確保するための競合相手との間の激しい戦いに直面し、従業員を維持するのに苦労していることです。これは、特に、技術者やプログラマーに当てはまります。彼らの専門知識や技術的知識はこれらの分野の企業にとって、貴重な資産です。 従業員が競合他社に流出することは、企業秘密の漏えいや主要な取引先の喪失など、企業に多くのリスクをもたらす可能性があります。これらの利益を保護するために、企業は競業禁止、勧誘禁止及び秘密保持条項を含む雇用契約を作成することが考えられます。これらの条項は、退職後を含め、従業員の該当行為を制限するために使用できます。本記事では、このような条項を企業がどのように利用すべきかについて説明いたします。   競業禁止条項 競業禁止条項は、従業員が雇用期間中及び雇用後に競合企業で働くことを禁止します。タイ王国最高裁判所は、競業禁止条項を承認し、執行しています。しかし、裁判所は、企業の利益と労働権を含む従業員の人権とのバランスを取らなければなりません。具体的には、企業に正当な利益があるかどうか、企業を保護するために競業禁止条項が必要かどうかを検討します。これを判断するにあたって、裁判所は特に下記の点を考慮します。 従業員の地位及び義務:重要な考慮事項の1つは、当該従業員の役割および当該従業員が会社の機密情報及び技術に触れているかです。従業員が機密情報に触れることがない場合には、競合相手において勤務することを禁止する必要はありません。例えば、食品製造ラインで働く従業員は通常、独自の技術や機密情報のレシピにはアクセスできません。このような状況では、タイの裁判所は従業員に対して競業禁止条項を執行することはしません。競合企業は、当該従業員を雇用することによって不公正な利益を得ることはなく、最初の雇用主の事業に影響を与えることもないからです。従業員が特別の情報又は機密情報にアクセスできる場合、禁止の範囲は従業員の役割によって異なりますが、競合相手において勤務することを禁止することが必要になる場合があります。顧客情報を取り扱う銀行出納係については、当該情報の不公正な使用を防止するために、短期間、競合相手のために働くことを合理的に禁止することが考えられます。これとは対照的に、マネージング・ディレクターについては、機密情報、サプライヤー契約、企業秘密などに無制限にアクセスできるため、競合相手で勤務することを長期間禁止することが考えられます。 地理的距離:競業禁止条項は、特定の地域に適用されることが多くみられます。特定の地域としては、雇用者の土地からの距離やある都市などの特定のエリアで規定されることがみられます。裁判所は、当該条項が企業の利益と従業員の権利との間で合理的なバランスをとっているかを判断する際に、地理的範囲を考慮します。広範囲の地域に競業禁止を適用する条項は、従業員の労働できる能力に深刻な影響を与える可能性があり、裁判所によって執行される可能性は低くなります。ただし、最高裁判所は以前、大規模な地域企業のマネージングディレクターについての訴訟では、東南アジア全域に適用される競業禁止条項について認める判断をしています。 禁止期間:競業禁止条項の合理性を判断するもう1つの要素は、雇用終了後に当該従業員が競合相手で勤務することが禁止される期間です。何が合理的であるかは、従業員の立場、部門、当該従業員を雇用することによって競合相手が不公正な利益を得るかによって異なります。いくつかの事例では、タイ王国最高裁判所は2年の競業禁止期間を認めていますが、マネージング・ディレクターに関する事例では5年の競業禁止期間も認めました。 損害賠償:競業禁止条項を含む契約には、条項の違反に対する損害賠償を規定することもできます。当該条項は執行可能ですが、裁判所が、契約により設定された金額が高額すぎると判断した場合には、損害賠償額を減額することができます。   勧誘禁止 勧誘禁止条項は、競合相手に転職した従業員が、以前の雇用主の顧客や従業員に接触して、新しい会社に転職するよう勧誘することを禁止しています。タイの裁判所は通常、勧誘禁止条項を有効とし、執行します。特に、以前の雇用主のもとで、当該従業員の役割が顧客と強い関係を築くことが可能だった場合、又は当該従業員が専門チーム内で協力して働いていた場合には、勧誘禁止条項を執行します。 裁判所は、企業の利益を保護するために合理的に必要な場合にのみ、この種の制限条項を執行します。したがって場合によっては、裁判所が勧誘禁止条項を執行する一方で、競業禁止条項は執行しないことも考えられます。企業にとって可能な限り広範な保護を得るためには、雇用契約に競業禁止と勧誘禁止の両方の条項を含めるべきでしょう。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Non-competition and Non-solicitation: Protecting Startups and Online Businesses from the Loss of Employees – Tilleke & Gibbins
8月 26, 2021
世界中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は何百万人もの人々の健康を脅かし、日常生活を妨げ、事業活動を停滞させ続けています。タイでは、パンデミックが始まって以来、今回の感染の波が最も激しく、多くの企業が再び閉鎖を余儀なくされています。しかし、希望はあります。その主な理由は、予防接種の増加ペースの速さです。ワクチンは深刻な健康問題を防ぐだけでなく、商業、貿易、観光を再開できるように、ビジネスにおいて従業員と顧客の両方を安全に保つのに役立っています。 タイでは多くの人が既に予防接種を受けており、苦境に立たされている使用者は、在宅勤務から職場での勤務を再開したり、顧客をCOVID-19にさらすリスクを最小限に抑える環境において歓迎するなど、安全かつ完全に事業活動を再開することを期待しています。 このような完全な事業の再開を期待し、多くのタイの使用者は、ワクチンなどの措置を義務付けることで職場でのCOVID-19の安全性を高めている海外の企業や組織に注目し、同様の義務をタイで課すことができるかどうかを知りたいと思っています。 タイにおいて検討すべき主な法的概念は、使用者が従業員に「合法的で公正な」命令を出すことを認める労働保護法B.E.2541(1998)の規定です。命令が「合法的で公正」であるためには、状況に釣り合ったものでなければなりません。COVID-19のパンデミックの現状では、使用者は、自社のリスクを軽減するための命令が、均衡がとれていて合法的で正当であると主張する根拠として、伝染病法B.E.2558(2015)やその他の現地の規制をあげることができます。 しかしながら、タイの裁判所が、現在の状況において、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを正当と判断するかは疑問です。上記の法的基準は他の行為にも適用できますが、使用者は、現在の職場の状態及び他の状況の全ての側面をケースバイケースで考慮し、その命令が状況に釣り合ったもので合法的かつ公正であるかどうかを決定すべきです。COVID-19にさらされること又は伝染のリスクを最小限に抑えるために使用者が課す職場での義務が認められるかどうかを明確にするためには、いくつかの質問をしてみることが有益です。例えば以下が挙げられます: 使用者の想定(正しく取り扱われなければ悪影響を及ぼす可能性が高い実際のリスクの想定)を裏付けるようなハイリスクの状況を判断する政府の規制又は発表はあるか。 社員が新型コロナウイルスに感染していると信じる合理的な根拠はあるか。 問題の従業員が職場でウイルスを感染させる可能性は高いか。 リスクを取り除くことができる解決策は他にあるか(例えば、従業員に在宅勤務や隔離勤務をさせるなど)。 これらすべての関連する質問を熟慮した後、使用者は、特定の従業員に対して職場の安全衛生を守るよう命令することができ、従業員が正当な理由なくこれらに違反した場合、使用者はそれらの従業員の職場への立ち入りを禁止することができます。 前述したように、伝染病法はパンデミックとの闘いを支援する重要な法律の一つです。ある地域で危険な病気や感染性の病気が流行していると疑う合理的な理由がある場合、当局は感染者や高リスク者、接触者、保菌者に、予防接種を含む診察や治療を受けるよう要求することができます。また、当局は、これらを実施する者に指示するため、文書による命令を発することができます。 したがって、使用者は、伝染病管理官から、従業員にワクチン接種を要求する手続きを進めるよう命令される可能性があります。仮にこれが起こった場合、そのような命令は、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを「合法かつ正当」とする裏付けとなります。なぜなら、使用者はそのような命令を遵守しなかった場合は罰則を科せられ、よって伝染病管理官の命令に基づく義務を果たすために従業員に対して懲戒処分を行うことが正当化されるからです。使用者また、事業所の区域内に実際にいるすべての者に対して予防接種を行うことが命じられた場合には、使用者は、従業員に対しても同様に予防接種を行うよう義務を課すことができます。 このような命令がない場合に従業員にワクチン接種を義務付けることは、従業員が「合法的で公正」ではないとしてその命令に異議を唱えることができ、問題となる可能性があります。この根拠は憲法そのものにあります。憲法第28条と第47条は、「何人も、その生命と身体において権利と自由を享有する」、「何人も、国が提供する公衆衛生サービスを受ける権利を有する」、「何人も、法律の定めるところにより、国が無償で有害な伝染病を保護し、根絶する権利を有する」と規定しています。しかしながら、憲法は自分の意志に反して予防接種を受ける義務を課してはいません。そのため、従業員に対しその意志に反して予防接種を強制することは、雇用主を訴訟や法的責任のリスクにさらすことになります。 もっとも、COVID-19の拡大を防ぐために、(許されないと思われる)ワクチンの義務化やその他の職場での命令の実行可能性に焦点を当てることは、使用者にとって最善のアプローチでないでしょう。結局のところ、もし100%の予防接種が最適なシナリオなら、これを達成するための最も現実的な方法は、全従業員が自発的に予防接種を受けることに同意してもらうことです。したがって、従業員との良好な関係-従業員のワクチンへのアクセスを容易にし、ワクチン接種を重要視すること―が、従業員の間で高いワクチン接種率を得るための最良の方法であると思われます。 さらに、使用者は、マスク、社会的距離の確保、手洗い、適切な換気、その他の衛生上の予防措置など、COVID-19感染の脅威を最小限に抑えるために、職場での標準的なCOVID-19安全対策の遵守を要請することができます。使用者は、対面又は物理的接触を最小化又は置換するためにテクノロジーの使用を強制することも可能であり、また、事業所及び顧客の接触領域につき、混雑を防止又は制限するため、再配置を行うことも可能です。 上記に述べた背景は、この問題に関するタイ法の立場についての一般的な指針を使用者に提供するものですが、使用者は、それぞれの状況に応じて専門家の助言を求めることが望ましいです。使用者は、柔軟で、従業員の士気や健康を支援し、病気の発生を予防する政策及び実務の実施を通じて、事業を着実に正常な状態に戻すことができます。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Workplace Reopening: Mandates and Other Safety Measures under Thai Law