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6月 11, 2024

継続する刑事事件に対するピナイ罰金訴訟法の影響

タイの法律、具体的には刑事訴訟法の下では、被害者は、検察官が事件を起訴することなく刑事裁判所に刑事事件を提起することができます。裁判所が事件の調査を行った後、裁判所は、さらなる審理のために事件を受理するか否かを検討し、審理結果に応じて被告を罰するべきかどうかを決定します。労働紛争や株主紛争など、特定の種類の事件に関与する民間当事者は、これを訴追するための共通のチャネルと考えるかもしれません。

タイの刑法は、新しい法律が多くの刑事犯罪をピナイ罰金犯罪に変えたため、最近大きく変化しました。しかし、これは比較的新しい進展であるため、ピナイ罰金を含む告訴が、これらの民間被害者によって刑事事件として裁判所に提出されている事例がまだあります。よって、このことは、裁判所がそのような事件を進めることができるかどうかという問題が生じています。

タイは、より重大でない犯罪からピナイ犯罪にして、刑事罰の特定種類の罰金を非犯罪化するための新たな法的措置として、ピナイ罰金訴訟法B.E. 2565 (2022) (Act on Phinai Fine Proceedings B.E. 2565 (2022) – ACFP) が施行してから、一年間以上経過しました。これにより、ピナイに関連する犯罪者は、保釈提出、旅行制限、懲役、犯罪歴を含むタイ刑法及び刑事訴訟法に基づくすべての刑事手続及び刑罰の適用をを受ける代わりに、罰金のみを支払わなければならなくなりました。

現在進行中のピナイ犯罪の裁判はどうなるのですか?

ACFPは、破産法 B.E.2483(1940年)、登録パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ、リミテッド・カンパニー、アソシエーション及びファウンデーションに関する犯罪の決定法B.E.2499 (Determining Offenses Relating to Registered Partnership, Limited Partnership, Limited Company, Association and Foundation Act B.E.2499)、労働関係法B.E.2518 (Labor Relations Act B.E.2518)、消費者保護法 B.E.2522 (Consumer Protection Act B.E. 2522)、株式会社法B.E.2535 (Public Limited Companies Act B.E.2535)及びACFPに列挙されたその他の法律に基づく犯罪を含む、204の法律に基づく犯罪を自動的にピナイ犯罪に変更しました。ACFPが施行されたので、これらの一般的なホワイトカラー犯罪の多くは、もはや犯罪ではなく、ピナイ犯罪となりました。この実際的な影響は、多くの犯罪がもはや犯罪とみなされないことです

この変更の影響の1つは、裁判所で進行中のこれらの犯罪の裁判が、ピナイ事件の裁判に関する最高裁判所所長規則 B.E. 2565 (2023) (Regulation of the President of the Supreme Court on Trial for Phinai Cases B.E. 2565 (2023))に規定されたガイドラインに該当するピナイ訴訟に変更されることです。

上記規則には、欠席裁判や非同期裁判、書面審理、電子的手続など、ピナイ犯罪を明確に目的としたピナイ事件の手続及び手続ガイドラインが含まれます。また、判決の通知を書面で行い、当事者に判決の審理への出席を求めないことも規定されています。ピナイ事件に対する手続及びガイドラインは、民事事件及び刑事事件の手続よりも、より柔軟で、より便利で、より迅速な手続をもたらします。

刑事訴訟法とは対照的に、上記規則は、ピナイ事件の目的上、「原告」の限定的な定義を有しています。具体的には、上記規則第3条及び同第11条は、原告が「検察官又は政府職員」でなければならないと規定しています。これにより、裁判所に訴状を提出できる適格者の範囲が狭くなります。上記条項は、ピナイの犯罪者がピナイの告発を受け入れること、又はピナイの罰金を支払うことを拒否した場合に、ACFP第23条と整合するように設計されており、その場合、政府職員は、法律に別段の規定がない限り、裁判所に訴状を提出するために、事実と裏付け書類を要約し、最終報告書を検察官に送付しなければなりません。これにより、ピナイ事件の原告は、検察官又は政府職員に絞られ、労働争議、株主紛争、取締役紛争などに関する犯罪のように、犯罪者に対する交渉又は圧力ツールとして、被害者が裁判所に直接事件を提起するケースが実質的に減少します。

しかし、ピナイを告発する者は、ピナイを告発した者が罰金を科されるように、政府職員を通じて主張を補完したり、苦情を提出したりすることができます。ピナイの訴訟は、政府職員と検察官の決定を介して裁判所に提起することもできます。

原告が検察官や政府職員でない場合はどうなりますか?

ACFP第23条と上記最高裁判所所長規則第3条および同第11条の影響は、原告が検察官や政府職員でない場合、裁判所は、原告がピナイ犯罪者に対してピナイ訴訟を提起する権限がないという理由で、訴訟を却下する以外の選択肢がないということです。これにより、裁判所は裁判の対象となる事件を受理しないことになります。

それでも、ACFPおよび上記規則は、裁判所そして多くの訴訟代理人が経験したことがない、又は深い知識を持っていない可能性が高い新しい手続法であることを否定することはできません。したがって、現地の専門コンサルタントに、ACFPおよび上記規則に関連する詳細又は更新を特定して説明し、裁判進行中のピナイ事件の戦略を分析することを求めることが推奨されます。

 

備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。

Case Dismissed: The Impact of the Phinai Law on Ongoing Criminal Cases

その他の情報 

10月 10, 2022
タイが最近麻薬のリストから大麻を削除したことは、同国にとって重要な変化であり、人事チームの中には、会社内で有害な事件が起きないようにするために、何らかの対策をすべきではないかと考えている場合もあるだろう。 例えば、出勤前に大麻を使用したため、勤務中に大麻の影響を受けている労働者がいたらどうだろう。以前は大麻が明確に禁止されており、使用者の敷地内で大麻を使用したり所持したりすると、労働者は懲役や罰金などの刑事責任を問われたため、このような問題はほとんど考慮されていなかった。しかし、政府が麻薬法に基づいて麻薬のリストから大麻を削除した今、そのようなことがより起こりやすくなっており、多くの使用者の間で、どうすればこのようなことを防止し、対処できるかという懸念が生じている。 会社の敷地は使用者の支配下にあるから、使用者には労働者が社内に大麻を持ち込むことを禁止する権限がある。特に、労働者が大麻を使用することは他の労働者を著しく妨害する可能性があるため、雇用主はこれを管理する権限を有する。しかし、労働者が禁止に違反した場合の罰則を設けたい場合は、そこまで単純にはいかない。   就業規則  労働者保護法(Labor Protection Act)では、10人以上の労働者を雇用する場合、タイ語の就業規則を定めなければならない。就業規則には、次の項目が含まれている必要がある。 労働日、所定労働時間及び休憩時間の指定。 休日・休日の取得の規則。 時間外労働及び休日労働に関する規則。 賃金の支払いの手配(支払日と支払場所)。 時間外賃金、休日賃金及び休日時間外賃金。 休暇及び休暇の取得の規則。 懲戒処分。 苦情の申出。 雇用の終了、解雇補償金及び特別解雇補償金。   就業規則(例えば、大麻関連のルールを導入するために)を作成又は変更する場合、使用者は次のことを行う必要がある。(なお以前は、労働者保護局長又はその指名する者に就業規則又は就業規則の変更書の写しを送付することが義務付けられていたが、2017年の労働者保護法改正でこれは撤廃された。) 就業規則を作成又は変更した日から15日以内に就業規則の実施を公表すること。 就業規則及びその変更を常時社内に保管すること。及び 就業規則・その修正を職場において公開していること。使用者は、就業規則又はその修正を電子的に公開することもできる。   しかし、労働者の雇用条件に影響を与えるような就業規則の変更には、より多くの意見を聞くことが必要である。労働関係法(Labor Relations Act)の下では、使用者は雇用条件を一方的に変更することはできない。 「雇用条件」という用語は、タイ法の下での広い概念であり、賃金、福利厚生、労働日数、労働時間等など雇用の条件であることが明確なものから、労働者の苦情の提出に関する規則、雇用の終了、懲戒処分、就業規則の改正、その他契約又は慣行により義務とされる職場の条件などの事項までを広く含む概念である。例えば、変動制のボーナスの基準は雇用条件とみなされ得るため、雇用者が書面においてそれを変更する権利を明示的に留保していない場合、これらの基準を使用者が一方的に変更することができない可能性がある。同様に、労働者に支給されるシャトルサービスなどの福利厚生も、雇用条件になりうる。 労働条件に影響を与える就業規則の変更をしようとする場合には、労働関係法に従い、労働者に対し要求を記載した通知書を交付して交渉するか、労働者の同意を得なければならない。ただし、就業規則に、使用者が将来就業規則を変更する権利を留保する旨の条項がある場合は、雇用条件に影響を与えない範囲での就業規則の変更をすることができる。例えば、就業規則に部署ごとの労働者数が記載されている場合などは、雇用条件の利益に影響を与えない範囲で変更することができる。 以上から、大麻に関する規則については、前述のとおり、使用者が社内で労働者が大麻を使用することを禁止することは可能だが、大麻を社内に持ち込んだ労働者を解雇するという規則を設けたい場合又はその他の罰則を科すとしたい場合には、雇用条件に影響があると考えられるため、使用者が一方的に行うことはできない。したがって、このような就業規則の改正を考える使用者は、労働関係法の手続きに従って、労働者に要求を記載した通知書を交付するか、労働者に同意を求めることによって、手続きを進めなければならない。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Cannabis and Human Resources Considerations in Thailand
9月 6, 2022
タイの現在の裁判手続の特徴的な要素の一つは、証人の法廷証言の記録を作成する方法にある。タイ裁判所で用いられる典型的な方法は、裁判所の速記官が逐語的記録を作成するのではなく、裁判官が証人の法廷陳述の要約を述べることである。すなわち、現在の方法は、事実審裁判官が、当事者の質問に対する証人の回答を聞いた後、裁判官自身の理解に基づいて、証人の答えを要約したものをレコーダーに録音し、裁判所書記官がそれを文字に起こして読みあげ、すべての当事者と証人が内容の正確性を確認するというものである。 しかし、タイ政府は現在、証人の証言を録画することによって、この方法を変えることを検討している。 タイでは、中央知的財産・国際貿易裁判所や中央破産裁判所で扱われているいくつかの裁判で、証人の証言のビデオ録画が導入されていた。しかし、2021年10月の規則において特定の重要事件や証人の動きが証言の重要な要素となる場合にビデオ録画の使用が認められるまで、一般的な刑事事件や民事事件では証人の証言のビデオ録画は行われていなかった。同規則の発効以降、被告人の犯行時の動きを供述する目撃者の証言など、証言中の動きが裁判所の判断の重要な要素となるいくつかの刑事事件では、証人の証言のビデオが録画された。 これまでのところ、このビデオ録画の方法がとられたのはごく少数の事件ではあるが、この実務が実行可能であることが分かり、準備も整ったため、タイは、バンコクの刑事事件を皮切りに、すべての裁判でビデオ録画を活用することを検討している。 証人の供述をビデオに記録することは、裁判官が証言について、証人の正確な言葉や身振りを含めて検討することができるため、特に証人の信頼性を評価するうえで役立つと考えられる。さらに、当事者は、裁判官が証人の答弁を要約し、裁判所書記官がそれを書き写すのを待つ必要がなくなるため、証言手続にかかる時間を短縮できる。ただしその代わり、証人の証言は法廷内の複数のカメラで録画されることになる。 しかし、この新しい方法の欠点の1つは、録画と証言記録が当事者に提供されないことである。当事者は裁判所の施設(利用可能な視聴装置は限られている)で録画の閲覧を求めることしかできない。当事者は(裁判所の裁量で)証言に関する裁判所のメモを入手することもできるが、このメモ自体を証人の証言として引用することはできない。また、当事者が、裁判所に証人の証言を検討してもらいたい場合、当事 者は証言の録画のタイムスタンプを引用しなければならないため、証言を引用する弁論(例えば、最終準備書面、不服申立書等)の準備に影響を及ぼす。さらに当事者の弁護士は、証人の発言を記録するためのスタッフを連れてくる必要が生じ、より手間と費用がかかることになる。 証人の証言を録画するこの新しい方法は、(当事者が同意すれば)ラチャダ刑事裁判所のいくつかの法廷で最初に試験的なプロジェクトとして行われることが予定されている。この新しい方法がうまくいけば、タイ最高裁判所長官は、証人の証言を記録する現在の方法を取り消し、この新しい証言のビデオ録画の方法を広範に実施できるような別の規則を発行すると思われる。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Thailand Considers Expanding Use of Video to Record Witnesses’ Courtroom Testimony
8月 23, 2022
補償条項は、タイを含む多くの法域において一般的な契約条項ですが、タイ法の観点からは、その強制執行は困難な場合があります。 一般的に、「補償する」とは、潜在的なリスクや損失について他方当事者に責任を負わせないようにすることを意味します。一方の当事者(「補償者」)が他方の当事者(「被補償者」)に補償するという場合、補償者は、(契約で合意された範囲内で)被補償者に債務または損害を支払い、補償する義務を負います。このように、補償条項は潜在的なリスクに対する責任を当事者間でシフトするための有用な規定となります。 一部の法域では、「補償」には、被補償者が負担した弁護士費用も含まれると解されています。これには、被補償者に対して提起された請求を防御する義務または防御するための資金提供の義務を伴う場合もあります。そのような法域の場合は、契約書に明確に記載されていなくても、補償者は、弁護士を雇って被補償者のための弁護士費用を支払わなければなりません。 補償条項を含む契約では、補償に上記のような防御義務を含めることが通常です。事例を用いてこの点を説明いたします。例えば、小売業者が、機械の供給者(サプライヤー)から機械を購入する場合、サプライヤーは、その機械に欠陥が生じた場合に小売業者の顧客からのクレームに対して小売業者を補償し、防御することに同意するとします。実際に機械に欠陥が生じた場合には、サプライヤーは、契約法又は過失に基づいて小売業者が被る損害を支払う義務に加え、小売業者の顧客が訴訟を起こした場合、サプライヤーは小売業者を防御するための弁護士費用も支払わなければなりません。 しかしながら、タイでは、この種の補償条項は強制できない可能性があります。多くの法域における契約法とは異なり、タイの契約法には「契約上の補償」について明記されていません。タイでは一般的に、「補償(Indemnity)」とは民商法典第222条に基づく「補償(Compensation)」を意味すると理解されています(最高裁判所判決7943/2542も同旨)。民商法典は、損害賠償請求は契約の不履行に起因して「通常」発生するすべての損害を含むと規定し、さらに「特別な事情により発生した損害で、当事者が当該状況を予見していた又 は当然予見すべきであった場合」にも、請求者は損害賠償を求めることが認められると規定します。 民商法典の222条の「補償」には通常補償と特別(結果的)補償の2種類があります。通常の補償は、合理的に予想される「直接的」損害に対するものです。これには、機会、便益、収入、利益の損失が含まれる場合もあります。例えば、前述のシナリオを使用すると、小売業者は欠陥のある機械を供給したサプライヤーに対して、機械の修理費用や修理の間のリース料を含む直接損害を請求して訴えることができます。 特別補償とは、原告が既に被告に危険性を知らせていたか、契約違反の前に被告が損害を予見すべきであったために、被告が予見可能と考えられる「間接的」損害に対する補償をいいます。同じ事例に戻りますと、もし小売業者が顧客に対し、機械を期限までに引き渡せなかった場合に違約金を支払うことに同意していた場合、その違約金は「間接的」又は「特別」損害とみなされます。サプライヤーは、当該機械の売買が行われた時点で小売業者と顧客間の当該違約金に関する合意を認識していた場合にのみ、これらの間接的損害を補償する責任を負います。 ここで1つ問題になるのは、サプライヤーと小売業者との間の契約に、サプライヤーは顧客のクレームに対して小売業者を補償し、防御することに同意すると書かれている場合、サプライヤーが小売業者を防御するための弁護士を雇用しなかったとき、小売業者は自分が負担した弁護士の費用を請求できるかということです。 タイの法典には契約上の補償に関する記載がないため、指針として関連する最高裁判所の決定を参照する必要があります。1998年の最高裁決定4023/2541において、最高裁は、被告の債務不履行があった場合に、原告が負担した弁護士費用を被告に支払わせる契約条項の有効性を検討しました。最高裁は、この契約条項は、裁判所が敗訴者に対して、弁護士費用の勝訴者への支払いを命じるかについての裁量権を有するとした民事訴訟法に反し、公序良俗に反するとして、無効と判断しました。 しかしながら、逆に、2005年には、最高裁判所は、契約書に明記された弁護士費用は、民商法典の第222条第1段落に基づく通常補償として請求しうる直接損害であると判断しました(決定6288/2548)。 これが新しい指針と思われたところ、さらにその後の2008年の最高裁決定(決定2147/2551)においては、2005年の決定と矛盾するように思える決定が出され、債務不履行当事者の弁護士費用を支払う契約上の義務は、いかなる法律に基づくものでもなく、弁護士費用は民商法典第222条に基づく直接損害でも特別損害でもないと判示されました。 これらのいくつかの異なる最高裁の決定によれば、弁護士費用をカバーする補償義務に関して、タイの裁判所が将来どのような判決を下すかは明らかでありません。したがって、当事者は、かかる契約条項に関して争いが生じた場合、具体的にどのように解決すべきかを決定する必要があります。しかし、今後この問題をめぐってさらなる紛争や事件が起これば、最高裁はこの論点を再検討することになると思われますので、裁判所が、世界中で補償条項の交渉を行うことがいかに一般的か認識することを期待したいと思います。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。 Enforcing Indemnification Clauses in Thailand
8月 26, 2021
世界中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は何百万人もの人々の健康を脅かし、日常生活を妨げ、事業活動を停滞させ続けています。タイでは、パンデミックが始まって以来、今回の感染の波が最も激しく、多くの企業が再び閉鎖を余儀なくされています。しかし、希望はあります。その主な理由は、予防接種の増加ペースの速さです。ワクチンは深刻な健康問題を防ぐだけでなく、商業、貿易、観光を再開できるように、ビジネスにおいて従業員と顧客の両方を安全に保つのに役立っています。 タイでは多くの人が既に予防接種を受けており、苦境に立たされている使用者は、在宅勤務から職場での勤務を再開したり、顧客をCOVID-19にさらすリスクを最小限に抑える環境において歓迎するなど、安全かつ完全に事業活動を再開することを期待しています。 このような完全な事業の再開を期待し、多くのタイの使用者は、ワクチンなどの措置を義務付けることで職場でのCOVID-19の安全性を高めている海外の企業や組織に注目し、同様の義務をタイで課すことができるかどうかを知りたいと思っています。 タイにおいて検討すべき主な法的概念は、使用者が従業員に「合法的で公正な」命令を出すことを認める労働保護法B.E.2541(1998)の規定です。命令が「合法的で公正」であるためには、状況に釣り合ったものでなければなりません。COVID-19のパンデミックの現状では、使用者は、自社のリスクを軽減するための命令が、均衡がとれていて合法的で正当であると主張する根拠として、伝染病法B.E.2558(2015)やその他の現地の規制をあげることができます。 しかしながら、タイの裁判所が、現在の状況において、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを正当と判断するかは疑問です。上記の法的基準は他の行為にも適用できますが、使用者は、現在の職場の状態及び他の状況の全ての側面をケースバイケースで考慮し、その命令が状況に釣り合ったもので合法的かつ公正であるかどうかを決定すべきです。COVID-19にさらされること又は伝染のリスクを最小限に抑えるために使用者が課す職場での義務が認められるかどうかを明確にするためには、いくつかの質問をしてみることが有益です。例えば以下が挙げられます: 使用者の想定(正しく取り扱われなければ悪影響を及ぼす可能性が高い実際のリスクの想定)を裏付けるようなハイリスクの状況を判断する政府の規制又は発表はあるか。 社員が新型コロナウイルスに感染していると信じる合理的な根拠はあるか。 問題の従業員が職場でウイルスを感染させる可能性は高いか。 リスクを取り除くことができる解決策は他にあるか(例えば、従業員に在宅勤務や隔離勤務をさせるなど)。 これらすべての関連する質問を熟慮した後、使用者は、特定の従業員に対して職場の安全衛生を守るよう命令することができ、従業員が正当な理由なくこれらに違反した場合、使用者はそれらの従業員の職場への立ち入りを禁止することができます。 前述したように、伝染病法はパンデミックとの闘いを支援する重要な法律の一つです。ある地域で危険な病気や感染性の病気が流行していると疑う合理的な理由がある場合、当局は感染者や高リスク者、接触者、保菌者に、予防接種を含む診察や治療を受けるよう要求することができます。また、当局は、これらを実施する者に指示するため、文書による命令を発することができます。 したがって、使用者は、伝染病管理官から、従業員にワクチン接種を要求する手続きを進めるよう命令される可能性があります。仮にこれが起こった場合、そのような命令は、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを「合法かつ正当」とする裏付けとなります。なぜなら、使用者はそのような命令を遵守しなかった場合は罰則を科せられ、よって伝染病管理官の命令に基づく義務を果たすために従業員に対して懲戒処分を行うことが正当化されるからです。使用者また、事業所の区域内に実際にいるすべての者に対して予防接種を行うことが命じられた場合には、使用者は、従業員に対しても同様に予防接種を行うよう義務を課すことができます。 このような命令がない場合に従業員にワクチン接種を義務付けることは、従業員が「合法的で公正」ではないとしてその命令に異議を唱えることができ、問題となる可能性があります。この根拠は憲法そのものにあります。憲法第28条と第47条は、「何人も、その生命と身体において権利と自由を享有する」、「何人も、国が提供する公衆衛生サービスを受ける権利を有する」、「何人も、法律の定めるところにより、国が無償で有害な伝染病を保護し、根絶する権利を有する」と規定しています。しかしながら、憲法は自分の意志に反して予防接種を受ける義務を課してはいません。そのため、従業員に対しその意志に反して予防接種を強制することは、雇用主を訴訟や法的責任のリスクにさらすことになります。 もっとも、COVID-19の拡大を防ぐために、(許されないと思われる)ワクチンの義務化やその他の職場での命令の実行可能性に焦点を当てることは、使用者にとって最善のアプローチでないでしょう。結局のところ、もし100%の予防接種が最適なシナリオなら、これを達成するための最も現実的な方法は、全従業員が自発的に予防接種を受けることに同意してもらうことです。したがって、従業員との良好な関係-従業員のワクチンへのアクセスを容易にし、ワクチン接種を重要視すること―が、従業員の間で高いワクチン接種率を得るための最良の方法であると思われます。 さらに、使用者は、マスク、社会的距離の確保、手洗い、適切な換気、その他の衛生上の予防措置など、COVID-19感染の脅威を最小限に抑えるために、職場での標準的なCOVID-19安全対策の遵守を要請することができます。使用者は、対面又は物理的接触を最小化又は置換するためにテクノロジーの使用を強制することも可能であり、また、事業所及び顧客の接触領域につき、混雑を防止又は制限するため、再配置を行うことも可能です。 上記に述べた背景は、この問題に関するタイ法の立場についての一般的な指針を使用者に提供するものですが、使用者は、それぞれの状況に応じて専門家の助言を求めることが望ましいです。使用者は、柔軟で、従業員の士気や健康を支援し、病気の発生を予防する政策及び実務の実施を通じて、事業を着実に正常な状態に戻すことができます。   備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Workplace Reopening: Mandates and Other Safety Measures under Thai Law