You are using an outdated browser and your browsing experience will not be optimal. Please update to the latest version of Microsoft Edge, Google Chrome or Mozilla Firefox. Install Microsoft Edge

8月 31, 2022

タイ: 気候変動法草案が作成される

世界各国は、気候変動に関する法律に大きな関心を寄せており、気候変動の勢いを弱めるために、国、地域、世界規模で多くの試みがなされている。その中でも特に注目すべきは、現在193の締約国が採択している気候変動に関する法的拘束力のある国際条約「パリ協定」である。この条約は、世界の平均気温を産業革命以前の水準から2℃以下に抑えることを目標としており、これまでの世界的な合意・議論よりもはるかに野心的な協調的取り組みとなっている。

パリ協定第4条では、各国に気候変動対策の行動計画からなる「国が決定する貢献」(NDC: Nationally Determined Contribution)を要請している。パリ協定の締約国であるタイは、2030年の温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)排出削減目標をビジネスモデル予測から20%削減する(技術開発、財源、その他支援へのアクセスを条件として25%削減する)としている。

この公約の達成を可能とするために、タイは国内の気候変動対策の重要なメカニズムとして機能する気候変動法の制定を進めている。2018年、天然資源環境省傘下の天然資源・環境政策計画局(ONEP: Office of Natural Resources and Environmental Policy and Planning)が、気候変動法のドラフトを作成することになった。その草案が完成し、報道によると、さらなる検討のために内閣に提出される。

気候変動法の草案は、気候変動の緩和・適応に関するタイの行動計画の枠組みを定めたものである。この法律案は、市民の権利、国家気候変動政策委員会、温室効果ガス・データベースなどにつき規定している。

 

市民の権利

気候変動に関する国民の権利として、国から気候変動に関する情報を受け取る権利、気候変動対策について情報・意見を提供して参加する権利、気候変動対策事業等に対して政府の支援を受ける権利などを定めている。

 

国家気候変動政策委員会

国家気候変動政策委員会は温室効果ガス排出削減、気候変動に対する適応・管理など、気候変動に関する政策・施策を内閣・関係省庁に提言することができる。同委員会は、気候変動に関する国家基本計画を内閣に提案し、国家温室効果ガス排出削減計画および国家適応計画を実行する役割を担っている。

 

温室効果ガス・データベース

草案では、天然資源・環境政策計画局による温室効果ガス・データベースの開発・管理を要請している。このデータベースには、温室効果ガスの排出量・発生源、温室効果ガスの純削減量等に関する記録が含まれる。温室効果ガスデータベースを促進・支援するために、下記の機関を含む国家機関は、温室効果ガスの排出・吸収・削減の活動に関して天然資源・環境政策計画局に報告することが義務付けられている。

  •  高等教育・科学・研究・技術革新省
  • 農業・協同組合省
  • 運輸省
  • 天然資源・環境省
  • エネルギー省
  • 内務省
  • 保健省
  • 工業省
  • 内閣が指定するその他の国家機関

上記のデータベースの維持・管理において、天然資源・環境政策計画局及び上記の機関は、他の国家機関又は民間事業者(工場経営者、エネルギー事業者等)に対しても情報の提出を要請することができる。

理由なく温室効果ガス関連情報を天然資源・環境政策計画局または関連の国家機関に提供しない、虚偽の温室効果ガス関連情報を提供する、又は温室効果ガス関連情報を隠蔽して他人に損害を与える等の行為は、行政罰の対象となる。

 

気候変動法のさらなる課題

気候変動法が制定されると、上述したような市民の権利が確立され、この法律のもとで様々な国家計画が策定される。現在の草案においては国家機関に温室効果ガスデータの提出を要求する権限を与えるなど、広範な行政措置を規定している。だが、被災した市民に対する救済方法については、まだ言及していない。したがって、気候変動から影響を受ける人々を保護し、救済策を提供するための手続き・対応をどうするかが今後、重要な課題となるであろう。

 

備考:本和文は英文記事から作成しました。原文については、以下のリンクをご参照ください。 Thailand’s Draft Climate Change Act

Related Professionals

その他のインサイト

7月 11, 2024
タイの法律、具体的には刑事訴訟法の下では、被害者は、検察官が事件を起訴することなく刑事裁判所に刑事事件を提起することができます。裁判所が事件の調査を行った後、裁判所は、さらなる審理のために事件を受理するか否かを検討し、審理結果に応じて被告を罰するべきかどうかを決定します。労働紛争や株主紛争など、特定の種類の事件に関与する民間当事者は、これを訴追するための共通のチャネルと考えるかもしれません。 タイの刑法は、新しい法律が多くの刑事犯罪をピナイ罰金犯罪に変えたため、最近大きく変化しました。しかし、これは比較的新しい進展であるため、ピナイ罰金を含む告訴が、これらの民間被害者によって刑事事件として裁判
7月 11, 2024
タイでは、罰金に関する重要な新しい手続法により、刑事罰に対する特定の種類の罰金が大量に削除され、特定の行政的罰金の手続が変更されました。 タイ法の下で科される罰金には、一般的に刑事罰と行政罰の2種類がありました。しかし、2022年10月25日、ピナイ罰金訴訟法B.E. 2565 (2022) (Act on Phinai Fine Proceedings B.E. 2565 (2022) – ACFP) が制定し、刑事上又は行政上の法的メカニズムが適用されない罰金の種類を法制化しました。この法律は2023年6月22日に施行されます。 ピナイの罰金は刑事罰でも行政罰でもありません。軽
7月 11, 2024
Tilleke & Gibbins は、「タイの会社取締役(義務と責任に関するガイドラインと Q&A)」を発表いたしました。この刊行物は、重要な企業の役割を引き受ける際に生じる義務および責任を理解する必要のある、将来または現職の会社取締役にとって頼りになるものです。 Tilleke & GibbinsのCorporate and Commercial Departmentのパートナー兼ディレクターである Kobkit Thienpreecha が執筆した「タイの会社取締役」は、企業とその取締役がタイ市場に参入する際に知っておくべき重要な情報トピックを提供しています。この
4月 2, 2024
インドネシアは多様な民族、文化、宗教を持つ多文化国家であり、文化的創造物、知識、伝統が豊富に存在する。そのような創造物、知識、伝統が特定のコミュニティーによって所有され、そのコミュニティーのアイデンティティの一部となっている場合、インドネシアの法律によって共有知的財産(Communal Intellectual Property)として保護される。 共有知的財産の一種は、伝統的知識である。よく知られた例として、プンチャック・シラット(pencak silat)として知られる武術がある。この武術は通常、客を迎える際に、ゴンダン・ボロゴン(gondang borogong)の音楽とともに伝統的に演