October 3, 2022
タイ:商標委員会による不使用取消請求できる者の解釈

【背景】

タイでは、他の国と同様に、登録商標の取消しには多くの法的理由がある。商標法第63条に基づく不使用の理由は、長い間、請求人にとって最も困難な理由の一つであった。

商標法第63条は、いかなる利害関係者も、商標登録の取消しを商標委員会に請求できると規定している。しかしながら、請求できるのは、請求時に、その商標の所有者が指定商品に登録商標を使用する意思がなかったことを証明できる場合である。取消請求の請求人はまた、取消請求前の3年間において、その商標が登録されている商品に対して善意で使用されていなかったことを示さなければならない。商標の所有者は、不使用が意図的なものではなく、 「取引における例外的な状況」 によるものであることを証明することによって、取消請求に対して反論することができる。

タイで不使用取消しが問題となっている理由の一つは、商標法が商標登録後に商標を使用しなければならない正確な期間を規定していないことである。そのため、商標委員会は、商標権者がその商標を将来使用する計画があると主張するだけで、そのことを証明する証拠を提出していないにもかかわらず、不使用取消請求を却下するのに十分であると判断した事例があった。

 

【最近の商標委員会の判断】

ある事件において、ある請求人の商標出願が、登録商標と誤認混同するほどに類似するとして商標登録官によって拒絶された。その後、請求人は引用された商標に対して不使用取消しを請求した。同時に、請求人は、登録商標の商品の一部と重複すると思われる商品を、自己の商標出願から削除することを決定した。これにより、商標登録官は引用商標を取消し、出願商標の登録に進めることができる。しかしながら、出願が引用された登録商標と抵触しないとみなされ、商標委員会は、請求人が引用商標に対して不使用取消しを請求できる 「利害関係人」に該当せず、不使用取消請求の理由を判断することなく、引用商標に対する不使用取消請求を却下した。

 

【コメント】

本審決は、商標法第63条に基づく 「利害関係人」 の定義を、引用商標に類似するとして拒絶された出願中の商標を有している当事者のみを含むと狭めているように考えられる。これは、 「利害関係人」 という表現も使用している、商標法の別の条文に基づく取消請求に関する過去の最高裁判所判決 (5333/2558) と矛盾する。この判決では、裁判所は 「利害関係人」 を不使用取消請求の対象となる商標との 「接点(connecting point)」 を有する者と定義した。裁判所の文言によれば、 「接点」 は必ずしも商標出願の拒絶に限定されるものではなく、過去に登録された商標の存在によって影響を受ける可能性のある他の状況も含まれ得る。

本件に関する商標委員会の判断が、将来の不使用取消手続において適用されるかどうかは、まだ不明である。適用される場合、不使用取消請求の成功率は現在よりもさらに低くなる可能性が高くなる。


執筆者
Kasama Sriwatanakul
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Tokunari Otake
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