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8月 26, 2021

職場の再開:タイ法に基づく義務とその他の安全対策

世界中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は何百万人もの人々の健康を脅かし、日常生活を妨げ、事業活動を停滞させ続けています。タイでは、パンデミックが始まって以来、今回の感染の波が最も激しく、多くの企業が再び閉鎖を余儀なくされています。しかし、希望はあります。その主な理由は、予防接種の増加ペースの速さです。ワクチンは深刻な健康問題を防ぐだけでなく、商業、貿易、観光を再開できるように、ビジネスにおいて従業員と顧客の両方を安全に保つのに役立っています。

タイでは多くの人が既に予防接種を受けており、苦境に立たされている使用者は、在宅勤務から職場での勤務を再開したり、顧客をCOVID-19にさらすリスクを最小限に抑える環境において歓迎するなど、安全かつ完全に事業活動を再開することを期待しています。

このような完全な事業の再開を期待し、多くのタイの使用者は、ワクチンなどの措置を義務付けることで職場でのCOVID-19の安全性を高めている海外の企業や組織に注目し、同様の義務をタイで課すことができるかどうかを知りたいと思っています。

タイにおいて検討すべき主な法的概念は、使用者が従業員に「合法的で公正な」命令を出すことを認める労働保護法B.E.2541(1998)の規定です。命令が「合法的で公正」であるためには、状況に釣り合ったものでなければなりません。COVID-19のパンデミックの現状では、使用者は、自社のリスクを軽減するための命令が、均衡がとれていて合法的で正当であると主張する根拠として、伝染病法B.E.2558(2015)やその他の現地の規制をあげることができます。

しかしながら、タイの裁判所が、現在の状況において、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを正当と判断するかは疑問です。上記の法的基準は他の行為にも適用できますが、使用者は、現在の職場の状態及び他の状況の全ての側面をケースバイケースで考慮し、その命令が状況に釣り合ったもので合法的かつ公正であるかどうかを決定すべきです。COVID-19にさらされること又は伝染のリスクを最小限に抑えるために使用者が課す職場での義務が認められるかどうかを明確にするためには、いくつかの質問をしてみることが有益です。例えば以下が挙げられます:

  • 使用者の想定(正しく取り扱われなければ悪影響を及ぼす可能性が高い実際のリスクの想定)を裏付けるようなハイリスクの状況を判断する政府の規制又は発表はあるか。
  • 社員が新型コロナウイルスに感染していると信じる合理的な根拠はあるか。
  • 問題の従業員が職場でウイルスを感染させる可能性は高いか。
  • リスクを取り除くことができる解決策は他にあるか(例えば、従業員に在宅勤務や隔離勤務をさせるなど)。

これらすべての関連する質問を熟慮した後、使用者は、特定の従業員に対して職場の安全衛生を守るよう命令することができ、従業員が正当な理由なくこれらに違反した場合、使用者はそれらの従業員の職場への立ち入りを禁止することができます。

前述したように、伝染病法はパンデミックとの闘いを支援する重要な法律の一つです。ある地域で危険な病気や感染性の病気が流行していると疑う合理的な理由がある場合、当局は感染者や高リスク者、接触者、保菌者に、予防接種を含む診察や治療を受けるよう要求することができます。また、当局は、これらを実施する者に指示するため、文書による命令を発することができます。

したがって、使用者は、伝染病管理官から、従業員にワクチン接種を要求する手続きを進めるよう命令される可能性があります。仮にこれが起こった場合、そのような命令は、使用者が従業員にワクチン接種を義務付けることを「合法かつ正当」とする裏付けとなります。なぜなら、使用者はそのような命令を遵守しなかった場合は罰則を科せられ、よって伝染病管理官の命令に基づく義務を果たすために従業員に対して懲戒処分を行うことが正当化されるからです。使用者また、事業所の区域内に実際にいるすべての者に対して予防接種を行うことが命じられた場合には、使用者は、従業員に対しても同様に予防接種を行うよう義務を課すことができます。

このような命令がない場合に従業員にワクチン接種を義務付けることは、従業員が「合法的で公正」ではないとしてその命令に異議を唱えることができ、問題となる可能性があります。この根拠は憲法そのものにあります。憲法第28条と第47条は、「何人も、その生命と身体において権利と自由を享有する」、「何人も、国が提供する公衆衛生サービスを受ける権利を有する」、「何人も、法律の定めるところにより、国が無償で有害な伝染病を保護し、根絶する権利を有する」と規定しています。しかしながら、憲法は自分の意志に反して予防接種を受ける義務を課してはいません。そのため、従業員に対しその意志に反して予防接種を強制することは、雇用主を訴訟や法的責任のリスクにさらすことになります。

もっとも、COVID-19の拡大を防ぐために、(許されないと思われる)ワクチンの義務化やその他の職場での命令の実行可能性に焦点を当てることは、使用者にとって最善のアプローチでないでしょう。結局のところ、もし100%の予防接種が最適なシナリオなら、これを達成するための最も現実的な方法は、全従業員が自発的に予防接種を受けることに同意してもらうことです。したがって、従業員との良好な関係-従業員のワクチンへのアクセスを容易にし、ワクチン接種を重要視すること―が、従業員の間で高いワクチン接種率を得るための最良の方法であると思われます。

さらに、使用者は、マスク、社会的距離の確保、手洗い、適切な換気、その他の衛生上の予防措置など、COVID-19感染の脅威を最小限に抑えるために、職場での標準的なCOVID-19安全対策の遵守を要請することができます。使用者は、対面又は物理的接触を最小化又は置換するためにテクノロジーの使用を強制することも可能であり、また、事業所及び顧客の接触領域につき、混雑を防止又は制限するため、再配置を行うことも可能です。

上記に述べた背景は、この問題に関するタイ法の立場についての一般的な指針を使用者に提供するものですが、使用者は、それぞれの状況に応じて専門家の助言を求めることが望ましいです。使用者は、柔軟で、従業員の士気や健康を支援し、病気の発生を予防する政策及び実務の実施を通じて、事業を着実に正常な状態に戻すことができます。

 

備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Workplace Reopening: Mandates and Other Safety Measures under Thai Law

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