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9月 6, 2022

タイ、法廷での証人尋問の録画の利用拡大を検討

タイの現在の裁判手続の特徴的な要素の一つは、証人の法廷証言の記録を作成する方法にある。タイ裁判所で用いられる典型的な方法は、裁判所の速記官が逐語的記録を作成するのではなく、裁判官が証人の法廷陳述の要約を述べることである。すなわち、現在の方法は、事実審裁判官が、当事者の質問に対する証人の回答を聞いた後、裁判官自身の理解に基づいて、証人の答えを要約したものをレコーダーに録音し、裁判所書記官がそれを文字に起こして読みあげ、すべての当事者と証人が内容の正確性を確認するというものである。

しかし、タイ政府は現在、証人の証言を録画することによって、この方法を変えることを検討している。

タイでは、中央知的財産・国際貿易裁判所や中央破産裁判所で扱われているいくつかの裁判で、証人の証言のビデオ録画が導入されていた。しかし、2021年10月の規則において特定の重要事件や証人の動きが証言の重要な要素となる場合にビデオ録画の使用が認められるまで、一般的な刑事事件や民事事件では証人の証言のビデオ録画は行われていなかった。同規則の発効以降、被告人の犯行時の動きを供述する目撃者の証言など、証言中の動きが裁判所の判断の重要な要素となるいくつかの刑事事件では、証人の証言のビデオが録画された。

これまでのところ、このビデオ録画の方法がとられたのはごく少数の事件ではあるが、この実務が実行可能であることが分かり、準備も整ったため、タイは、バンコクの刑事事件を皮切りに、すべての裁判でビデオ録画を活用することを検討している。

証人の供述をビデオに記録することは、裁判官が証言について、証人の正確な言葉や身振りを含めて検討することができるため、特に証人の信頼性を評価するうえで役立つと考えられる。さらに、当事者は、裁判官が証人の答弁を要約し、裁判所書記官がそれを書き写すのを待つ必要がなくなるため、証言手続にかかる時間を短縮できる。ただしその代わり、証人の証言は法廷内の複数のカメラで録画されることになる。

しかし、この新しい方法の欠点の1つは、録画と証言記録が当事者に提供されないことである。当事者は裁判所の施設(利用可能な視聴装置は限られている)で録画の閲覧を求めることしかできない。当事者は(裁判所の裁量で)証言に関する裁判所のメモを入手することもできるが、このメモ自体を証人の証言として引用することはできない。また、当事者が、裁判所に証人の証言を検討してもらいたい場合、当事

者は証言の録画のタイムスタンプを引用しなければならないため、証言を引用する弁論(例えば、最終準備書面、不服申立書等)の準備に影響を及ぼす。さらに当事者の弁護士は、証人の発言を記録するためのスタッフを連れてくる必要が生じ、より手間と費用がかかることになる。

証人の証言を録画するこの新しい方法は、(当事者が同意すれば)ラチャダ刑事裁判所のいくつかの法廷で最初に試験的なプロジェクトとして行われることが予定されている。この新しい方法がうまくいけば、タイ最高裁判所長官は、証人の証言を記録する現在の方法を取り消し、この新しい証言のビデオ録画の方法を広範に実施できるような別の規則を発行すると思われる。

 

備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。Thailand Considers Expanding Use of Video to Record Witnesses’ Courtroom Testimony

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